古橋文乃ストーリーズ〜流れ星のしっぽ〜

「ぼくたちは勉強ができない」のヒロイン、古橋文乃の創作小説メインのブログです。

さとうは[x]の道筋に懊悩し驚嘆し感涙し歓喜するものである。(2/9)

一言総括。ささやかな願いからの抑えきれない想い。

 

文乃の一人称。これでもか、というくらい心理描写が丁寧な話。次週予告を見るに、いよいようるか、理珠と向き合いざるをえない。その前に、文乃の複雑な今の心情を振り返る意味でも、とても重要な回でした。

 

古橋文乃は乙女である

恋する女の子らしさが冒頭から爆発しています。そりゃ、好きな男の子が毎日通ってきてくれるんだもの。身嗜み、髪型に気を使うのは当然でしょう。毎朝は戦争ですよ、という文乃のセリフは、現実を表している。そして、その後の文乃の独白もまた同じ。

 

でもね。成幸くんにキレイって言ってもらえたら……なんて考えるようになってからはそんなに苦でもなかったりするんだけどね。

 

恋する乙女であれば誰しもが思うであろう、たった一つの理由です。ただそれだけかもしれない。だけど、『ただそれだけ』が、どれだけ彼女たちを勇気づけさせ、キレイにさせ、より苦しく切なくさせることか。

 

古橋文乃はとめられない

古橋家に通う成幸。文乃は、距離の近い成幸を意識して、想像することをとめられない。結婚したら、どうなるかさえ、考えてしまう。問121でも。眠る成幸に服をかけ、その様子を静かに眺める文乃。長年連れ添った夫婦みたい、という感想を持っているくらいだから。余談ですが、赤ちゃんにも泣きぼくろがある。

 

さとうは、怒っている

文乃は事あるごとに謝ります。うるかに。理珠に。成幸に、さえ。

 

優しさにつけこんで

わがまま言って

ごめんね

 

どうしてここまで追い込まれなければならないのだ?というのが、率直な想いであり、わたしの怒りの理由にもなる。

1人の普通の女の子の恋。それがなぜ、ここまで荷が重くならなければいけないのか。どうして、普通の恋をさせてあげられないのか。もっと、前を向けるものであったっていいのに。

 

わたしは、怒っている。キャラクターにでもないし、批判的なことを言う人たちでもないし、アンチ文乃の人たちにでもない。

 

誰かを対象としたものではないんですが…ただ、ふつふつと、怒りが湧いてくるのです。

 

古橋文乃のささやかな願い

この怪我が治るまで

それまで少しだけ

成幸くんをひとり占めできたら…

 

多分、これ以上のことは、本当に求めていないんでしょう。今はまだ、かもしれないけれど。

 

嘘でも「恋人同士みたい」って言ってくれたらいいのに

 

これは、踏み込むものではないんですよね。恋人気分を少しだけあじあわせてほしいな、という、ささやかなお願い。ここも、それ以上のものはない。しかしながら、強い思いは込められているわけですが。

 

唯我成幸はわからない

文乃→成幸は十分わかる。わかりすぎる。うるか、理珠への遠慮はわかるが、それさえクリアできれば、あとはまっすぐ想いを伝えるだけ、かもしれない。ただ、これは文乃サイドだけの話。成幸が文乃に想いを寄せるようになるのか?何がきっかけで?それが不透明。よほど納得のいく理由がなければ、ここは難しいところ。わたしでも共感できないかもしれない。

文乃の独白。

もしわたしが怪我をしてなかったらそばにいては…くれないのかな…?

これに対する成幸の答えは、いまのところ、何も見えない。というのが正直な思いです。

 

古橋文乃は現状の変化を求めない

恋人同士になるには。ただ仲の良い関係性に安住するままではいけない。その関係性を変えるアクションをしなければ、いけない。

うるかのように、ストレートに告白をするか。

理珠のように、気持ちの変化に懸けてみるのか。

2人には、意志があった。成幸と、もっと近付きたい。文乃は、今のところそういう意志はない。今の関係性。自分の怪我が、成幸が自分の側にいてくれる理由であり、繋がりだとすれば。このままでもいい。そして、ほんの少しだけわがままを言うならば。

 

こんな「また明日」がいつまでもずっと続いてくれたらいいのにな…

 

ということ。求めるのは維持。変化では、ないんです。

 

また明日

 

夕焼け、一日の終わり。古橋家を去る成幸、見送る文乃。仕事に出る夫を見送る妻の構図にも見える。オーバーラップ。夫は、家に帰ってくる。待っていれば、愛しい夫は、私の元へと帰ってくる。それは、ありふれているかもしれないけれど、素晴らしい毎日の1シーン。それを繰り返したい、そう文乃は願う。ささやかに、願う。

 

古橋文乃に見る、普通の女の子の恋を考える

 

文乃は極めて普通の女の子です。美人で国語の天才だという属性はあるにせよ。

 

これまでを振り返り。

彼女の恋は、一番普通の女の子の恋に近いのではないでしょうか。

薄々思っていたことですが、確信に近いものになりつつある。

 

なぜそう思うのか。

 

文乃にとって成幸は。

身近にいる優しい男の子で。

夢を応援してくれて。

自分の悲しみさえ共感してくれて。

友達も好きな人、だけど好きになってしまって。

 

特別なことは何もない。だけど何気ないことが積み重なって、恋に落ちた。

 

気持ちは簡単に伝えられない。優しくしてくれるだけで嬉しすぎて。ただ、この関係性が続くことをただ祈りたい。

 

こんなの、当たり前の、強くも弱くもない、その勇気のなさだって共感できる、1人の恋する女の子が思うことに決まってるじゃないですか。

 

うるかの恋は一途すぎる。

理珠の恋は強すぎる。

 

そう思うのです。それに比べて、文乃の恋はとても身近ではないでしょうか。

 

それに優劣をつけたいわけではなくて。言いたいことは。

 

繰り返しになりますが、

文乃は極めて普通の女の子である、

ということ。

そして、普通の女の子に、特別なアクションをとることを求めることはまた酷ではないか、そうとも思うのです。

 

成幸との恋は成就してほしい。でも。そこにスペシャルな出来事はあってほしくない。もっと地に足の着いた、小さな、丁寧な、共感しやすい、そんなことの積み重ねで成り立ってほしい。そんな特大のわがままを、わたしは願っているところです。

 

この項、以上です。

 

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