古橋文乃ストーリーズ〜流れ星のしっぽ〜

「ぼくたちは勉強ができない」のヒロイン、古橋文乃の創作小説メインのブログです。

さとうは[x]の道筋に懊悩し驚嘆し感涙し歓喜するものである。(7/9)

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一言総括。2人の恋の距離、小指一本分。

 

ファーストインプレッション。

 

唯我成幸の恋心。

 

これが一番ずがんときました。

 

本当にずっと描写されてこなかった、彼の心の真ん中。

 

一人の女の子が、いつのまにかいたんですね。

 

古橋文乃。

 

冒頭からわたしはくらくらきました。

 

本当に、どうしようもなく。

 

彼らしい、真っ直ぐな恋に。

 

唯我成幸の「片想い」

 

文乃の隠せなかった好意。それが現れた行動の数々が、成幸の心を揺さぶっていました。

 

こんな…当たり前のことだったかもしれません。

 

普通の恋愛のプロセス、なんですよね。

 

スペシャルな、特別なイベントがきっかけだったわけじゃない。

 

日常のちょっとした、

 

あ、愛おしいな

 

そんなことの積み重ねで、

 

唯我成幸は、

 

古橋文乃を、

 

好きになった。

 

そして。

 

彼の片想いが、はじまったわけです。

 

恋人同士みたいって

言ってくれたらいいのに

 

成幸くんへのチョコ なの…

 

成幸くん「が」いいんだよ

 

いずれも、少なくともわたしを感動させてくれたシーンの数々。当事者である成幸にも…伝わっていたんですね。

 

すれ違いは恋愛の基本…

 

古橋文乃は唯我成幸が好き。

 

唯我成幸は古橋文乃が好き。

 

これで物語ははい、落着、といけばもやもやしないんですが。

 

まだまだ。

 

モヤモヤが残ります。

 

成幸、文乃ともに、冒頭の時点ではまだ、お互いが自分に

 

「かせ」

 

をはめていますから。

 

二人の距離

 

文乃は…つい、成幸を目で追ってしまいます。

 

好きだから。

 

忘れられるわけが、ないから。

 

それは、第三者が見ていても気づくレベルのようです。

 

恋愛レーダーばりばりのいばらの会が拾えるくらいですから。

 

それにしても、今回はよい仕事したんじゃないですか?

 

彼女たちが出てきた瞬間から、

頼むから足引っ張らないでくれ!

ということばかり願ってましたから…。

 

そんな奇跡的だといっていい、いばらの会のアシストで、

成幸と文乃は2人、並んで水槽を仰ぎ見ることとなりました。

 

2人の距離は…。

 

遠くない。全然、遠くない。

 

周りくどい言い方をしましたね。

 

とても、近いものでした。

 

指と指が、触れ合うくらいに。

 

こつんとぶつかり合って…

 

いつか。

 

手をつなぎたいな。

 

お互いのそんな気持ちさえ、伝わってしまうような、2人の距離でした。

 

しかし。

 

お互いを冷静にさせる事情もあれば、分かつ言葉もあります。

 

わたしは

いつまでも一緒には

いてあげられないからね

 

文乃の言葉。

 

背景に、

文乃はそもそも友人が好きな、かつ、うるかの告白を聞きうまくいっている成幸と一緒にいれるわけがないことを、

成幸は文乃のやんわりとした一緒にいることはできないニュアンスを感じていること、そして、うるかの告白を断ったことに引け目を感じていること、そういったことがあります。

 

さて、星の話をしよう

 

成幸と文乃。共通の強い、そして、大切な話題。

 

それは、星の話題。

 

特に、星を一緒に見上げたことです。

大きくは、2つあります。

 

一つ目。問39。

 

旅館回。男の子と女の子で同じ布団、簡単に寝付けない二人。成幸が気づいたのは、窓から見える満天の星空でした。

 

星空を見ながら。文乃はたくさんの星の知識を披露します。成幸は圧倒されつつ、そんな文乃を微笑ましく見ます。

そして、文乃は亡き大好きだった母の思い出を話し。成幸は夢を追い求める皆への羨望を話し。文乃は、成幸を応援し続けることを伝えます。

その夜。眠りながらも、おそらく母のことを思い出して涙を流していた文乃の姿を見て、自分も父のことで眠りながらよく泣いていた成幸は、せめて気を紛れさせることができれば、と思い、文乃の手を握り締めます。

文乃は。成幸の優しさに触れて。自分の身体を成幸に預けたのです。このことは、ずっと文乃の中で大切だったんです。

「どうしてあの夜、自分の手を握ってくれていたのか」

それは、成幸への恋に落ちるきっかけになるほどに。

繰り返しますが。

大切な思い出になっていたのです。

 

二つ目。問88。

 

文乃長編の山場。

追い込まれている様子の文乃を見かねた成幸が、「デート」という名目で連れ出します。

向かった先は…林の奥。けっこうな茂みをかき分けて、ついた先は、少し開けた場所。

そして。

 

満天の星空。星、星、星、でした。

 

文乃にも見せたかった、という成幸。どうしてこの場所を知っていたのか?はこの時は明かされませんでしたが、文乃と成幸は並んで星空を見上げることに。

文乃にとって、とても嬉しいサプライズもありました。

成幸が、星についての知識を披露してくれたこと、そのために、星のことを勉強してくれていたこと。

また、懸命に星のことを話す文乃に、断絶していた父と向き合うよう、成幸は背中を押します。

アクシデントで偶然手を取り合うことになり、そのまま、文乃への応援宣言をして…。

文乃は、勇気を出すこととなりました。

 

そんな2つのエピソードは、文乃にも、成幸にも、大切な思い出に、なっているんです。

 

問166の、水族館のシーンに戻ります。卒業旅行の思い出を話し、ここでは主に食べ物のことになっていますが、それを楽しく会話しながらも、成幸は、文乃は、それとは異なる、強く強く結び合うためのことを考えていました。

 

成幸くん、わたしね…

なあ古橋、俺は…

 

いつかまた一緒に

君と

本物の星が見たかった

 

上述の通り。

 

2人で星を見ることは…

文乃にとっても。

成幸にとっても。

特別なことなんです。

特別ということは。

見るたびに、お互いが、想いを深めてきたことを、知っているから。

 

また、本物の星を見たかった

 

それは、二人ともいまの関係性よりも、踏み出したかったということで。

 

そんな二人の気持ちを思うと…わたしはなかなかこみ上げるものがありました。端的に言ってしまえば、切なくて。見たい、ではなくて。見た、かった。叶わなかった願い、そういま時点では共有されていたものでしたから。

 

問39と問88への思い出

 

少し話がそれますが。星空エピソードについての超個人的な思い出。

 

問39は、問38からの引きで、誰が成幸とお泊まりするんだ?ということでネット上では盛り上がっていました。問38でほぼ出番がなかった文乃だよ!と思い一週間緊張していたところの、文乃の登場、そして、素晴らしいエピソード。もー、最高でした。当時は紙だったので、コミックスがでるまでずっと本誌は大切にしつつ、めちゃくちゃ読み返してました。問39は、いまだにベストエピソードだと思っています。当時は、確か、ジガがまだ連載されていた、ような記憶があります。

 

問88。この時もまだ紙でした。早朝5時ごろ最寄りのコンビニに買いに行き、わくわくしながら読み。美しい星空のシーンに胸を打たれつつの。1ページどかんとつかった、文乃の手をとりながらの成幸の応援宣言。どかんときました。ニヤニヤではなく。ドキドキしながら、何度も何度も、このページだけ見返していました。飽きもせずに。本当に素敵な演出で、初読の感動はわすれないと思います。

 

唯我成幸と武元うるか

 

卒業旅行の帰路。成幸はうるかの隣に座っていました。

 

突然、強烈なデコピンをみまわれます。

 

ずっとあたしに変な気ーつかってるっしょ?

行動しない言い訳にされんの

すっげームカつく

 

確定したことはいま何もいえません、わたしの能力では推測しかできませんが。

 

うるかは、成幸のことがまた大好きな女の子でした。

 

自分が気持ちを伝えて、届かなかった。成幸には違う想い人がいて。それが文乃だと、気づいていたのかも、しれません。

 

好きな人が誰の姿を追っているのか。好きであればあるほど…察してしまう気がするのです。

 

だから。

 

苛立っている。

 

文乃にきちんとアプローチしない成幸に。なにせ、アプローチしない背景に、自分を傷つけたのなんだの、そんな事情を挟まれてはたまらないよ、と。

 

しっかりと、心のままに動いてほしい。

 

そんなうるかの強烈な応援でした。

 

成幸は…動きます。

 

古橋文乃と緒方理珠

 

卒業旅行後、自宅の前で。

 

文乃のところに、理珠が駆けつけてくれます。

 

理珠は問います。

自分が嫌いなのか?

 

理珠は…。成長しています。人の心の機微がしっかりと理解できるようになっている。そして。好きな文乃であるからこそ。そのことがよくわかってしまう。

 

理珠はまた、もう一つのことにも気付いていたようにも思います。

 

理珠が自分を嫌いになった要因の一つに、成幸への恋愛感情とうまく向き合えなかったこともあったとわたしは思っています。

 

さすれば。文乃は、自分同様に、自分が嫌いになっているようにも見えて。それは、何か、恋愛感情と向き合えなかったことも背景にあるのでは?と。いまの理珠なら、そこまで思いを巡らしてもおかしくないと思いました。

 

どうして恋をしただけなのに…

こんなに苦しまなくちゃいけないの…?

 

文乃のずっと、ずっと、ずうっと抱いていた苦悩…。それが、言葉として吐き出された。初めて、です。ずっと心の中で思いその度にいろんなものを押し殺してきた、その気持ちが。

 

理珠が提示した言葉は。

 

「友達のために」…と

自分を犠牲にした側とされた側

かわいそうなのはどちらでしょう

 

同じ土俵で並び立ち

時には戦い合える存在をこそ

友達と呼ぶのだと思います

 

自分を犠牲にした側=古橋文乃

自分を犠牲にされた側=緒方理珠、武元うるか

そして、線を引いていた以上、

同じ土俵で並び立ち=並び立てていなかった

戦い合える=戦う前提すらなかった

文乃からみた、理珠とうるかは、友達だったけれど、理珠の定義での友達ではなかったのではないか。

 

いやー、強烈です。文乃と理珠の関係性だから成り立つ、やりとりですね。

 

しかし、文乃はようやく、告白できました。自分の恋と友情の板挟み。ようやく、といったところです。

 

この流れは、理珠でなければ出来ませんでした。

 

理珠の応援を受けて。

 

文乃は…動きます。

 

古橋文乃の「覚悟」

 

理珠が自分で解かせた、文乃の恋と苦悩の連立方程式。

 

文乃は

 

「戦いに行く」こと

 

を回答として導き出します。

 

りっちゃん…ごめん

 

この一言が、重かった。文乃の覚悟を示していました。

 

成幸の元に戦いにいってくる自分を応援してほしい。理珠の想いもうるかの想いも知ってるんだ。だけど。

 

同じ土俵に立って。

成幸のことが好きな、うるか。

成幸のことが好きな、理珠。

同じように、

成幸のことが好きな、自分。

 

並び立ち。

 

そして、「戦いに行く」ことを誓うのです。

 

この覚悟は、理珠がいなければ絶対にできなかった。

 

この覚悟がなければ、文乃は成幸の元へはいけなかったでしょう。

 

成幸の伝言

 

成幸から文乃への伝言。

 

「もう一度だけ一緒に本物の星が見たい」

 

文乃は何を読みとったのでしょうか。

 

普通の待ち合わせだろうな、ということではないですよね。

 

文乃が伝えたかったことが、想い人から提示してくれたんだから。こんなに嬉しいことはないはずです。

 

成幸が、自分に何かを伝えようとしてくれていて。自分だって、成幸に伝えなければいけないことはあって。

 

伝えた先はどうなるかなんてわからない。

 

でも、「友達」と決めたんだ。

 

「戦いに行く」

 

そんな想いが、文乃を突き動かします。

 

古橋文乃のステータス

 

わたしは正直世界で一番文乃に甘いので、あまり手厳しいことは言えないかもしれませんが。

 

文乃のステータス、どうなんでしょうね。

 

成幸と一緒にいたくて、怪我は治っていないんだ、と嘘をついてしまい。

結果成幸にも迷惑をかけることになり。

ずっと友人と同じ人を好きになったことを友人に告白できず。

友人から発破をかけられようやく告白できた。

 

うーむ。客観的にみるとなかなかダメダメ。勇気を持ってほしいなあ、というのがわたしの勝手な願いだったんですけど、少しその理想からは遠かったかもしれません。

 

成長という意味では、うるか、理珠に劣ると言われれば、そのことも肯定せざるを得ないです。

 

古橋文乃の弱さ、みたいなものに大きな変化というか、上塗りされる強さ、みたいなものはなさそうです。

 

少しの勇気。これくらいは見られそうですけれど。

 

何度か主張しているのですが、

古橋文乃のテーマは、

「ありのままのわたしで」

ということなのかな、と思ったり。

 

つまり、大きな自分の成長、というのか、変化、というのか、は、精神力が強くなければなしとげられないものです。そうでない場合はどうすればよいんでしょうか。

 

ありのままで、いい。

間違ってもいい。

間違った時には周りが助けてくれる。

だけど本当に自分ですべき時には。少しだけの勇気がいるよ。

 

で読み下せるのかな、とすっごく無理やり考えてみました。

 

 

完璧に推測の域を出ませんけど!

 

さて。次回の舞台は、

約束のあの場所

になるのでしょうか。

 

楽しみに、次回を待ちたいと思います。

 

この項、以上です。