古橋文乃ストーリーズ〜流れ星のしっぽ〜

「ぼくたちは勉強ができない」のヒロイン、古橋文乃の創作小説メインのブログです。

💫[x]は互いに想い想われるものである💫

f:id:shiroxatou:20201021193805j:image

 

 

【唯我成幸の場合】

 

「…ん」

 

眠りが浅かったようだ。周囲はまだ暗い。時計をちらりと見る。夜中の3時過ぎだった。


隣では、愛しくてたまらない彼女である、文乃が寝息を小さくたてながら眠っている。お互いに、手を握りあったままだった。文乃の綺麗な左手。

 

成幸くんはね、いつも大切な時にわたしの手を握り締めてくれたの。

 

そう、文乃は嬉しそうに話してくれることが多くて。あまり意識はしていなかったものの、それ以来、もっと意識して握るようにはしている。

 

文乃が喜んでくれることは全部したいし…俺だって、文乃と手を握る時はいつも幸せなのだから。

 

デートのとき。


二人で並んでお皿を洗ってるときの、なんでもない時間の隙間。


…抱き合ってるとき。

 

その繋がりを、いつまでも、ずっとずっと大切にしたいと思っている。

 

「なり、ゆき…くん」

 

文乃が、寝言で俺の名前を呼んでくれていた。

 

愛しさで胸がいっぱいになる。

 

今すぐに、また、愛しあいたい、そんな衝動を必死で抑え付け。

 

せめて、と、繋いだ手をそっと外し、両手を文乃の背中に回して、できるだけ優しく、抱きしめる形にはした。

 

いつだったか、旅館で文乃と泊まったことがあった。まさか、同じ布団で寝ることになるとは、だった。あの時は、意図せず、朝になると文乃を抱きしめてしまっていたが…。

 

いまは、違う。俺が、文乃を愛していて、抱きしめたいから、そうしている。

 

文乃の綺麗な形をした唇に、そっと、キスをして。

 

しばらく、彼女の美しい寝顔を眺めていた。

 

【古橋文乃の場合】

 

「…ふわ…」

 

部屋の中は、少し明るくなっている。朝日がカーテンの中から入ってきて、少しずつ朝の気配をわたしたちに伝えてくれているのだ。

 

時計は、朝の5時半。起きるには少し早い。

 

わたしは、いつのまにか、成幸くんに優しく抱きしめられていた。わたしの背中に両手が回されていて。わたしは彼の胸に、頭をコツンとした形になっている。少し顔を上げる。目の前には。

 

大好きな人。成幸くん。

 

溢れる想いを抑えきれずに、たまらず、キスをする。起こさないように、気をつけながら、そっと。

 

昨夜のことを、少し思い出して、顔が真っ赤になる。一人暮らしをはじめた成幸くんのおうちに遊びにきて。引越しのお祝いだー、といって、一緒にワインを一本飲んだ。

 

最初はテーブルに向かいあわせでいたはずなのに、いつのまにか並んで手を繋ぎながらお酒を飲んでいて。

 

だんだん、お互い口数が減ってきて、熱い瞳で見つめ合う時間が増えてきて。どちらからだったか、キスの交換がはじまって、そして…。

 

愛しあった。

 

これも…幸せでたまらない時間だ。

 

思い返すと恥ずかしくてたまらないのだけれど…。

 

「…ふみの…」

 

不意に成幸くんに名前を呼ばれる。起きたかな、と思ったけれど、まだみたい。寝息をたてて、成幸くんはまた眠ってしまったようだ。

 

成幸くんの背中にわたしも手を回す。成幸くんの胸に耳を当ててみる。強い、心臓の音が聞こえた。

 

今日は、午前中はお互い予定はない。

であれば。

 

また、抱いてほしいし。

 

わたしも、たくさんたくさん、愛を伝えたい。

 

そう強く、思ったのだった。

 

【ふたり】

 

成幸が目を覚ます。


「ふみの…。おはよう」


「おはよう、成幸くん」


文乃は優しい笑顔を浮かべながら、成幸に挨拶を返す。


抱き合ってるふたり。お互いの距離は近い。


お互い身につけている衣服は最小限だ。


「あのさ、文乃」「あのね、成幸くん」

 

お互い同じタイミングで言葉を掛け合い、2人とも照れた表情になる。

 

考えていることも、きっと同じ。

 

そんな想いを共有して。

 

気持ちを抑えきれない、そんなふうに、文乃から成幸にキスをする。


成幸も、お返しとばかりに文乃に長い長いキスをする。

 

『愛したい』

 

互いのそんな想いが伝わってくる。

 

ふたりの愛は、もっともっと熱を帯びはじめて。

 

末長く、その愛が続きますように。

 

(おしまい)

 

f:id:shiroxatou:20201021185002j:image